社長インタビュー Vol. 5
藤田が普段、社員に口酸っぱくして伝えていることだ。 なぜそこにこだわるのか。 過去の経験と、 そこでつくられた信条を探った。
——藤田さんがよく仰っている「逆算」ですが、この仕事の仕方を身につけられたのはいつなんでしょうか。
社会人になって最初の広告代理店時代の、SP(セールスプロモーション)営業という、制作物をたくさん作る営業時代に叩き込まれました。この仕事では店頭販促物や各種印刷物を作るんですけど、基本的にはいつも納期が足りなかった。しかもミスったら、代理店が修正の費用を全部負担しなければならなかったので、ミスは許されない。1文字でも間違えたら当然それは刷り直しだから。せいぜい15%ぐらいのマージンしか乗っけていないので、そんなことをしたら8回分の仕事が無かったことになる。そしてペナルティーもくらう。それは世間一般では当たり前なんだけどね、インターネットぐらいですよすぐ直せるの(笑)。
納品日とか最後のゴールを意識して仕事しないと、あらゆるものはこだわり過ぎると時間なんていくらでも経ってしまう。いかにロスなくスムーズに回していくか、という段取りの良さ・進行の良さは常に問われていたわけですね。非常に少人数で、膨大な数の案件を回していたチームだったので、その中で身についたのだと思います。
我々は社会人なので、お給料や年俸をもらっている。当然、その給料の支払い日にも期限があるし、カードの引き落としにも期限がある。全てに期限があるという、ある一定のリズムの中で、自分の生活が出来上がっているわけですよね。だから仕事においても、そのリズムを崩してはいけない。それに我々はクリエイティブに関わる仕事をしているので、もうこだわりだしたら止まらない。でも我々はアーティストではなくて、クリエイターだったり、ディレクターだったりする。どこまでもこだわればいいというものでもない。
——「定量的」についてはいかがでしょうか。
私は昔感覚的な人間で、常に定性的なものの言い方をしていました。それが若いうちはかっこいいと思っていたし、曖昧なところやちょっといい加減なところがまたちょっと面白かったり。しかも感覚的なことを言ったほうが、女子にモテるっていう(笑)。数字バキバキに固めたものを言っても「おもんないやつ」になってしまうので。まぁ、そんな勘違い男子だったわけです。
でも、正直、社会人になるとそれでは説得力がない。仕事上で色々経験していく中で、「定量的」という言葉に遭遇することが増えた。これは、転職を何度もしている中でlivedoor(ライブドア)に入ったとき、メディア事業部の数値管理がリクルート式だったことに由来していると思っていて。リクルートに入ってはいないけど、上司が元リクだったから。当社の仕事の進め方、数値管理というのは、その回し方を徹底的にやりこんだことでこうなったのだと思います。実はそれで散々アホ扱いされてつらかったです(笑)。
要するにいくらなんだ。ヨミはいくつなんだ。そのために何をするんだ。ということをずっと言われ続けて矯正されました。いま社員のみんなに言ってることとほとんど一緒です。私でも矯正されたので、みんなできるようになります。
——ちなみに、プライベートにもそういったクセは出ているのでしょうか。
ありました!で、めちゃくちゃモメたことがあります。
奥さんとは30代最後に結婚させて頂いて、子宝にも恵まれました。が、子育てにおいては家事をもっとしてほしい!と日々言い合いをしていました。そんなに言うなら定量的に、各作業というか子育てに関する役務を(笑)、負荷ごとにポイント化して数値管理をしたことがありました。結果的に、確かにちゃんと管理できたし、彼女がおもっていたよりは手伝っていたことが証明されたんですけど、奥さんとの仲が悪くなった(笑)。家庭にいかにもビジネス風味の「定量的」とか「逆算」を持ち込んでも、全然話にならないというか。家庭を円満にするのであれば、曖昧な感じがいいと思いました。知らんけど(笑)。
ただ一方で、趣味のゴルフですね。
30代の後半から始めて、1年で100を切り、それから丸2年でシングルプレーヤー(パーにプラス1桁=9オーバーまでの平均スコアの人)になりました。ゴルフは会社の経営者になってから始めた趣味ですが、スコアの作り方やコースの攻め方、一打ごとのスイングのポイントを細かくチェックして改善するということをしました。自分で勝手に「PDCAゴルフ」とか言ってるんですけど(笑)。めちゃくちゃ「定量的」、かつ自分の取り組んでいる内容を日々改善するという形でうまくなった。100を切るのは、頭を使えばいける。80台を常に出すにはアプローチの精度をあげる。精度をあげるためにスイングとギアを自身に合わせていく。その上で70台になるには2打目が重要になるのでアイアンの精度をあげていく。そういったフェーズごとに改善ポイントを変更して、スコアを縮めていったという感じですかね。
手前味噌で恐縮ですが今は公式ハンデ6。公式ハンデ6はまあまあスゴいから(笑)。憧れのハンデ5を目指してさらなる改善をしていきます。
——定量的に、日々改善していくことでそこまで上手くなれるんですね……「PDCAゴルフ」、恐るべしです(笑)。
ありがとうございました。